行政書士に興味があるけど、中卒や高卒では無理と思われている方、意外に多いのではないでしょうか?
行政書士は国家資格であり、法律系の資格であることから、中卒や高卒では受験ができないと勘違いされているのかと思いますが、実は行政書士試験は誰でも受けることが可能な資格のひとつなのです。
そして、むしろ中卒や高卒の方にこそ行政書士の資格を取得してほしいなと思います。
今回は、中卒や高卒の方に行政書士の資格をお勧めする理由についてご紹介致します。
中卒でも試験は合格出来るのに高校生では行政書士になれない?

行政書士になるには試験に合格しなければなりませんが、行政書士試験では年齢をはじめ受験の要件は特に設けられていません。
ですので、いってしまえば小学生でも受験が可能ということになります。
実際の合格者の年齢ついて、直近令和3年度の合格者の属性をご紹介します。
属 性 | 合格者数 |
10歳代 | 45人 |
20歳代 | 1,112人 |
30歳代 | 1,520人 |
40歳代 | 1,374人 |
50歳代 | 949人 |
60歳代 | 353人 |
合 計 | 5,353人 |
(一般財団法人行政書士試験研究センター公表資料「受験者・合格者の属性」より作成)
ご覧の通り10歳代の合格者は45人で、このうち最年少者は14歳(男女各1名)の中学生でした。
申込者に至っては11歳(男女各1名)です。小学生ですね。
このように、行政書士試験を受験するには、「中卒でも問題なし!」ということがお分かりいただけたかと思います。
ただし、試験に受かったら、早速行政書士登録をして、今日から仕事をはじめよう!というわけにはいきません。
なぜかというと、20歳未満の合格者では行政書士登録が出来ないこととなっているからです。
<行政書士法二条の二>には、行政書士になれない者として、以下のように規定されています。
(欠格事由) 第二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、行政書士となる資格を有しない。 一 未成年者 二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者 四 公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者 五 第六条の五第一項の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者 六 第十四条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者 七 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から三年を経過しないもの |
つまり、現状20歳未満は試験に受かっても行政書士になれないということになります。
ちなみに2022年から民法が改正され、成年者が18歳以上になります。
行政書士法二条の規定には「未成年」とあるので、2022年4月からは18歳以上であれば行政書士になれることになります。
行政書士試験は一度受かってしまえば、更新は不要ですし、資格が喪失するこもありませんので、成年に達してから登録ということが可能です。
試験を受けるタイミングは人それぞれなので、時間のある学生のうちに早目に取得して、機が熟したら登録・開業もありなのです。
中卒や高卒の方に行政書士をお勧めする理由
実は、受験資格が不要な試験は行政書士だけではありません。
《士業別受験資格の要件》 | |
試験の種類 | 受験資格の要件 |
弁護士 | 法科大学院修了 又は 司法試験予備試験合格 |
弁理士 | なし |
公認会計士 | なし |
税理士 | ①学識による受験資格、②資格による受験資格、③職歴による受験資格 |
司法書士 | なし |
社会保険労務士 | ①学歴による受験資格、②実務経験にる受験資格、③国家試験合格 |
行政書士 | なし |
行政書士だけでなく、弁理士や公認会計士、司法書士も受験資格は不要です。
しかしながら、行政書士以外の上記3資格は難易度がかなり高いです。
いずれも行政書士と比べると、どれもハードルが一段どころか数段上がる難関資格です。
受験資格が必要ないので、中卒や高卒でも行けるんじゃないか?と思われますが、そう簡単には合格出来る資格ではありません。
この3士業と比べると行政書士は中卒の方が合格するのに現実味があります。

そうはいっても、やはり法律を学習するので行政書士もそう簡単に合格するのは難しいのではないでしょうか?

おっしゃる通りです。なので、きちんと学習計画を立てることがとても重要なのです。
行政書士は大卒が有利?

学歴要件が必要ありませんが、行政書士もやはり基礎学力がある受験生の方が有利だといえるしょう。
理由としては、
①受験を経験している。大卒の場合、中卒の方と比べると7年も多く勉強する習慣が身についている。
②試験問題の中には中学校の授業科目だけでは対応できていないものが多数ある。
大卒の方全てが一生懸命勉強したとはいいませんが、この年数は伊達でありません。
また、行政書士の試験は法律が中心になります。例えば中学校や高校の授業で学ぶ法律(公民)では、知識として不十分です。
試験のための法律を一から学ばなければならないので、大学で法律を学んだ方と比較すると、当然学習時間は余計にかかることが予想されます。
加えて、一般知識もレベル的には、大卒の方が受験する公務員試験の内容に近いものが出題されたりしています。
もちろん大卒といっても全ての大卒者が中卒や高卒の方より学力が高いとはいいきないですし、大卒者間で能力にかなりの差があることを考慮しても、やはり有利であるのは否定できません。
それだけなく、受験勉強を経験し合格をした人は、合格するためのノウハウというようなものが身に付いています。
中卒や高卒で受験するのが不利であるというのは、この点に尽きるでしょう。

なんだか、中卒や高卒の方では難しいように感じます。

そう思っちゃいますよね~!でも、最初にお話ししたように中学生でも合格出来るんです。ちゃんと勉強すれば学歴なんて関係ない資格なんですよ。本当は!
大学で法律を学んだ方や行政書士試験より難しいとされる司法試験を目指す方が不合格になったり、逆に法律を学んだ経験がない方や中卒の方、高卒の方が一発合格したという話は決して稀ではありません。

実際に私の同業者にもたくさんいらっしゃいます。
ただし、法律をはじめて学ぶ人は独学でも受かる可能性はないわけではありませんが、やみくもに学習を進めると、かなり時間を費やすことになるでしょう。
多少費用はかかりますが、最短で合格するにはやはり講座などを利用するとよいと思います。
コンプレックスがあるからこそ行政書士がお勧め
士業のよいところは合格してしまえば、開業できるところです。
一方、就職となると企業によっては学歴で選別されてしまいます。
給料面でも、現在の日本の一般企業の給料体系は年功序列かつ学歴別で、同じ年齢でも大卒の方と中卒の方の給料を同じとするところはほとんどないでしょう。
しかし、合格して独立してしまえば、企業でいうところの学歴・年功序列は全く関係ありません。
特に行政書士は「先生」と呼ばれることもしばしばです。
「先生」と呼ばれる職業だからいいというわけではありませんが、もし学歴コンプレックスがある方ならなおのこと、行政書士はコンプレックスを払拭できる職業ともいえます。
まとめ
行政書士試験は、年齢・学歴・国籍に関係なくどなたでも受験ができます。
中卒の方も高卒の方も頑張り次第で合格を目指せます。
ただし、大卒の方と比べると基礎学力が劣っている可能性は否定できません。
法律をはじめて学ぶ方や、学力不足と感じるなら講座を利用することも検討しましょう!