行政書士の需要や仕事は今後なくなるのか?【現役行政書士が検証】

行政書士資格

行政書士の取得を目指している方の中には、今後の行政書士の需要について心配されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

受験者の多くは、実務経験がないまま行政書士を目指すことになるため、現状が把握できず、今後の仕事について不安だと思います。

そこで、今回は今後の行政書士の需要について検証したいと思います。

果して行政書士の需要はなくなるか?

結論から先に申し上げると、わたし自身は、行政書士の需要はなくならないと考えています。

その理由のついては、いくつかありますが、先ずは行政書士の現状からご紹介したいと思います。

登録人数からみた行政書士の需要とは

はじめに、現在の行政書士の登録人数をご覧ください。

以下の表は、総務省に公表の「行政書士の都道府県別登録者数」から過去10年間の合計人数を抜粋したものです。

年度 登録者数 対前年増減数 対前年増減比
平成22年 40,475人 629人 1.6%
平成23年 41,584人 1,109人 2.7%
平成24年 42,177人 593人 1.4%
平成25年 43,126人 949人 2.3%
平成26年 44,057人 931人 2.2%
平成27年 44,740人 683人 1.6%
平成28年 45,441人 701人 1.6%
平成29年 46,205人 764人 1.7%
平成30年 46,915人 710人 1.5%
平成31年 47,901人 986人 2.1%

 (総務省資料「行政書士の都道府県別登録者数」より作成)

公表資料は平成31年までのデータですが、ここ10年行政書士の人数は右肩上がりで増えていることが分かります。

このデータだけを見ると、行政書士の登録者数が増えているため、あたかも需要も増えているかのように感じます。

上記登録者の中には試験合格組と公務員などの試験免除組の区別はありません。

個人的には今後は試験免除者のうち元公務員の方の登録がこれまで以上に増えると予想しています。

というのも、昔と異なり、定年したら悠々自適というわけにはいかなくなった現代においては、公務員も例外でなくなっています。

以前の公務員なら行政書士には登録しなかったであろう方々も、これからはセカンドステージとして行政書士登録する人が増えてくるのではと考えられるからです。

現状からから見た行政書士の需要

上記でご紹介した通り、行政書士の数は増えているのが現状です。

しかし、行政書士の数が増加していることと、需要があることは分けて考えなければなりません。

行政書士の業務というと、建設業許可に代表される許認可業務が王道といわれています。

開業当時は私も建設業許可をはじめとした許認可業務、入管業務、相続業務をメインとして取り扱う予定でした。

しかし、いざが開業してみると、どの業務も既に飽和状態であることが分かりました。

飽和状態である業務に経験のない新人行政書士が参入するのは容易ではありません。

さらに、近年は行政手続きのデジタル化が進んでいます。

許認可申請は行政書士に依頼にしなくても自分で申請可能で、今ではほとんどの申請書をダウンロード出来るようになっていて、記入もPC上で簡単に行えます。

しかも、分からいない事は行政側に尋ねれば教えてもらえるのです。

行政書士の出番は益々減少するような印象です。

加えて、ちょっと前になりますが、日本経済新聞(2017年9月25日)の記事に「野村総研とオックスフォード大学との共同研究結果」が掲載されていて、行政書士の業務は今後10~20年で自動化できる可能性が93.1%と示されていました。

公表されれた士業の中では、AIによる自動化が最も高い確率だったのが行政書士でした。

ご参考までに他の士業についてもご紹介します。

士業名 AIによる代替可能性
弁護士 1.5%
司法書士 78.0%
弁理士 92.1%
公認会計士 85.9%
税理士 92.5%
社会保険労務士 79.7%
中小企業診断士 0.2%
行政書士 93.1%

野村総研の研究データを見た多くの行政書士は複雑な心境を抱えると思います。

しかし、士業の内訳をみると、❝なるほど❞と納得してしまう部分があります。

最も高い確率でAIに取って替わられる行政書士の仕事につていえば、書類作成業務がメインで、これらの業務はある程度パターン化しています。

パターン化、AIが最も得意とするところですね。

逆に確立の低い弁護士の仕事は、業務の内容が一様ではなく、パターンに当てはめるのが困難な業務だからと考えられます。

もっとも可能性が低い中小企業診断士についての理由については、はっきりわかりませんが、業務のほとんどがコンサルティングだからではないでしょうか。

つまり、コンサルティング業務も一様ではないですし、答えも一つではないからなかな?と考えています。

今後の行政書士の展望は?

①行政書士の数は年々増えている②行政書士の主な業務は既に飽和状態にある③行政書士業務はAIに取って替わられ可能性が高い、以上の3つを見ると、行政書士の将来に明るいものは見えてきません。

さらに行政書士の数は増える、人口は減る、デジタルが進む、ことを考えれば、確かに需要減が予想されます。

しかし、行政書士の仕事が先の研究結果のようにほぼAIにとって代わられるとは考えられません。

確かに、従来のようなやり方での行政書士の需要は減るかもしれません。

とはいえ、実務に就いてみると、行政手続がデジタル化されたとしても全て人が対応できるわけでないことが分かりました。

例えば、コロナ禍になって以来、事業者向けに支援金等の施策がありましたが、いずれも申請はWebです。

私が支援した事業者の方々の多くは、ご自身のメールアドレスすらよく分からず、当然PCやスマホの操作にも手こずり、ID取得さえ出来ない状態です。

現在、こういった事業者の支援金申請の代行を有償で行えるのは、行政書士だけです。

そして、支援金の例はほんの一例に過ぎません。

デジタル化が進んでも、行政書士が必要とされるシーンはこれまでと違った形かもしれませんが、現れるでしょう。

また、従来の業務も全く需要がなくなるとも考えられません。

理由は、現状も自分で申請出来る許認可業務を行政書士に依頼する理由を考えればお分かりになると思います。

申請書類の作成というのは、一般の方からするととても面倒な作業です。時間もかかります。

行政書士の私ですら、滅多に扱わない業務では面倒に感じるくらいです。

書類の作成は面倒、時間がない、やりたくない。というのが、行政書士に依頼する最も多い理由だと思います。

こういった人たちは今後も一定数いると考えらるため、行政書士の需要が前述の記事のような確率でAIに取って替わられることはないと考えています。

ただ言えるのは時代の流れについていけない行政書士の需要はなくなると覚悟しておいた方がよいということです。

ただ、これは行政書士に限ったことではありませんが。

今後の行政書士に求められるスキルとは

業務内容が一様ではなく、パターン化もされておらず、個々の案件の対応が異なる業務であれば、行政書士とて、AIに取って替わられることがないということになります。

今後、行政書士に求められるのは、定型的なものではなく、個々の案件に即したサービスが提供できるスキルを持つことです。

また、従来の業務にとどまらず幅広い分野に対応できる行政書士も求められます。

行政書士の仕事はこうあるべきだ。みたいな型にはまった考え方ではなく、さまざまなフィールドで活躍できる行政書士は今でもたくさんいらっしゃるはです。

わたし自身も開業当時は、取り扱いたいと思っていた業務に固執してしまっていたところがありました。

その後ご縁があり、小規模事業者の支援のお仕事をいただき、現在のメイン業務となっています。

しかし、最初からすんなり受け入れられたわけではなく、「これって、行政書士業務?」と悩んだ時期もありました

それでも、今では行政書士でなかったらこの業務には従事していないし、逆にこの業務だから続けてこれた!といえるまでになりました。

わたしが考える今後の行政書士に求められるのは、

  1. 定型的な業務に留まらず、従来の業務の中にコンサルティングのような要素を取り入れたサービスが提供できる
  2. 時代のニーズに即対応できる
  3. 既成概念にとらわれない考え方が出来る

といったスキルだと考えています。

まとめ

行政書士の人数はここ10年右肩上がりで増加しています。

しかし、行政書士の人数と需要は比例していないことには注意が必要です。

AIによる代替可能性が最も高い行政書士は、今後も増えることが予想されますが、需要に関しては現状増加することは考えにくいです。

行政書士の需要が全くなくなることはないでしょうが、時代の流れに対応できない行政書士は生き残れない可能性も否定できません。

今後も引続き、またこれから行政書士として活動するなら、時代に即した考え方やスキルを磨くことが重要です。

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