資格取得についての相談で、FPと宅建のどちらの資格がおすすめかよく質問されることがあります。
どちらが良いのかについては、簡単に即答できるようなものではなく、わたし自身は目的で決めるべきと考えています。
そこで、今回はFPと宅建の違いやダブルライセンスについてご紹介したいと思います。
FPと宅建士では活躍できる業界が違う
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)と宅地建物取引士(宅建)の資格のどちらを取得すべきか悩んでいる方は、先ずご自身がどの業種で仕事をしたのかを考えてみる必要があります。
FPと宅建では、それぞれ必要とされる業界が異なります。
金融系の企業に勤務する場合はFP資格、宅地建物取引業者や不動産関連企業に勤務する場合は宅建資格を取得すべきということになります。
例えば、最近の銀行はFP資格は取得して当然とされているようで、就職の際にFP資格を有していなくても入行後には取得をすることが求められるようです。
銀行に勤務する方はFP資格が必須です。
FP資格は3級から1級までのランクがあり、少なくもFP2級までは取得したいところです。
一方、宅建士の方は、宅地建物取引業者に宅建士の設置が義務付けられています。

確か、ひとつの事務所で「業務に従事する者」5人につき1人以上の専任の宅建士を置かなければならないのでしたよね?

その通りです。この要件は事業を行う間は常に維持しなければならないのです。
専任の宅建士が退職などして、5人に1人の要件を満たさなくなった場合は、補充をしなければなりません。
従って、宅建士は常に需要がある資格といえ、不動産関連企業への就職には有利です。
宅建士の資格が役に立つ業界とは
実際に宅建士の資格で活躍できるのはどんな業界なのでしょうか。
宅建士が活躍できる業界の一例をご紹介します。
やっぱり、最も需要が多いのは不動産業界
宅建士が必要とされるのは、土地や建物の売買や賃貸及びそれらの仲介を行う場合であり、自分が所有している土地や建物を単発で売買する場合やいわゆる大家さんには宅建士の資格は不要です。
ですから、厳密には不動産業=宅地建物取引業ではありませんが、一般には宅建士が必要とされる場合の不動産業というと宅建業を指しています。
そして、述した通り宅建業を行う事業者には宅建士の設置が義務付けられています。
設置義務のある宅建士には、「常勤性」と「専任性」の2つの要件を満たすことが求められていて、これを専任の宅建士といいます。

同じ宅建士でもパートやアルバイトでは専任の宅建士として認めてもらえないんですよ。
「常勤性」とは事務所に常時勤務することを指し、この「常勤性」が認められない場合は、専任ではなく一般の宅建士という扱いになります。
【常勤性が認められない事例】 ・営業時間の一定時間に限られる非常勤やパートタイム従業員 ・勤務先から退社後や非番の日の勤務 ・在学中の大学生 ・社会通念上、通勤可能な距離を越えている場合 ・別企業の従業員や公務員である場合 |
「専任性」については、『専ら当該事務所等の宅地建物取引業に従事すること』が求められます。
要は、❝兼任はいけませんよ❞ということです。
【専従性から認められない事例】 ※同一の事務所で常時勤務し、専ら宅建業に従事する場合は認められます。 |

実は私も昨年宅建業者登録をしたのですが、当初は法人での申請を予定していました。
でも、行政書士と兼務する場合は個人で同一事務所でないと認められないとのことで、仕方なく個人で申請したんです。
士業の兼務は、地方自治体によって許可基準が異なり、大阪などは士業と法人の宅建業者の専任宅建士が兼務できるようです。
建設業界にも一定の需要がある
建設業者というと建築士というイメージがありますが、建築した物件を販売するには宅建業の許可が必要になります。
従って、大手の建築業者では、不動産部門を設置している企業が多いのです。
宅建業法では宅建業者について以下のように規定しています。
宅地建物取引業とは次の1、2、いずれかの行為を行う場合を指します。
- 宅地又は建物について自ら売買又は交換することを業として行うこと
- 宅地又は建物について他人が売買、交換又は賃借するにつき、その代理若しくは媒介することを業として行うこと
このように建築業界でも宅建士の資格が重視されています。
金融系の企業に就職するケースもある
住宅ローンの取り扱いがある金融業界でも、宅建士の資格を歓迎する企業も多いです。

銀行員というとFPというイメージですが、そういえば知人の銀行員の何人かは宅建士の資格を保有していましたね。
ただし、金融業界での宅建士の立ち位置は、不動産業界や建設業界のものとは異なります。
前者では宅建士の設置義務がありませんが、後者2つの業界で宅建業を行う場合は必須となりますので、金融業界での❝宅建資格はあった方が良い❞に留まります。
FPは金融系企業だけでなく、多様な業種で役立つ
宅建士に対してFPは、その資格でなければ出来ないという、いわゆる独占業務がありません。
試験もお金に関する幅広い知識が求められていて、多様な業種での就業が可能です。
多様な業種での就業が可能である反面、絶対必要な資格でないのも事実です。
FP資格が就職に有利に働く業種としては、保険業界、銀行などの金融機関、不動産関連企業、税理士事務所、社会保険労務士事務所などが挙げられます。
さまざま業種で役にたつ資格ではありますが、FP資格は3級から1級まであり、就活で有利に働くのはFP2級以上です。
銀行などは最低でも2級としているところが多いため、可能であればFP1級まで取得することをおすすめします。
実はFPと宅建士は相性の良い資格

最初にFPと宅建士が活躍できる業界は違うという話をしましたが、実はFPと宅建はとても相性の良い資格でもあるのです。
前述した金融機関の例のように住宅ローンを扱う業務では、宅建の知識が生かせます。
宅建業界においてもお客様からローンの相談をされた場合は、提携FPにライフプランの作成をお願いすることもあり、FPの資格は重宝されます。
実際に宅建士の資格を持って不動産業を営む人の中には、FPの資格を併せ持つ人も少なくないですし、逆にFPとして業務を行う人の中には宅建士の資格を有しているケースも多く見受けられます。
宅建士の設置が義務付けられている宅建業では宅建士でなければなりませんが、それ以外の業種では、どちらも保有していて損がない資格とえいます。
そこで、今回ご紹介したような業界での就業を希望する場合は、FPと宅建士のダブルライセンスの取得を検討してみても良いのではないでしょうか?
かなりのアドバンテージになることに違いありません。
FPと宅建のダブルライセンスの場合、結局どちらをすべきか?

FPと宅建のダブルライセンスとする場合、どちらを先に取得すべきかについては、今現在就業している、若しくは就業を予定している業界で最も必要とされている資格から取得すべきでしょう。
例えば、現在不動産会社に勤務(若しくは予定)していて、どちらの資格も有していないのであれば、当然宅建士から取得すべきです。
宅建士 | FP2級 | |
受験資格 | なし | 次のいずれか ・3級技能検定合格者 ・FP業務の事務経験2年以上 ・日本FP協会が認定するAFP認定研修を修了した者 ・厚生労働省認定金融渉外技能審査3級合格者 |
試験 | 年1回(10月) | 年3回(1月、5月、9月) |
試験時間 | 13:00~15:00 | 学科:10:00~12:00 実技:13:30~15:00 |
出題形式 | 4肢択一式 | 学科:4肢択一式 実技:記述式(計算問題含む) |
受験料 | 7,000円 | 学科:4,200円、実技:4,500円 |
合格基準 | 35点〜37点(受験者のレベルで変化) | 全体の6割以上 |
難易度については、FP2級<宅建士、FP1級>宅建士 といった感じです。
内容についてはFP試験では難問が出題されることもあり、過去問だけの対策では不十分です。
一方、宅建は比較的素直な問題が多く、ひねった問題はあまりないので、過去問対策だけで独学でも十分合格出来ると思います。
尚、難易度等については、あくまで両方を受験した私の所感であることをご承知おき下さい。
また、FPについては受験資格も必要なため、受験資格がない場合は宅建を取得した後で業務に就きながら経験を積んで受験資格を得るとよいでしょう。

不動産業界での経験もFP資格の実務経験になるのですね!

そうなんですよ。FPの受験資格につていは、行政書士とFPの記事で紹介していますので、良かったらそちらも読んでみて下さい。
不動産会社に勤務される場合はFP2級までの取得でも十分ですが、金融機関等に勤務される方はFP1級を取得されることをおすすめします。
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まとめ
FP資格と宅建資格は必要とされる業界が異なります。
宅建は宅建業者に設置義務がある資格ですが、FPには独占業務がありません。
不動産関連業界での勤務を希望する場合は宅建士の資格を、金融業界での勤務を希望する場合はFP資格を取得すべきでしょう。
実は、FPと宅建士はとても相性の良い資格です。
これを機会にFPと宅建のダブルライセンスを検討してみてはいかがでしょうか。