普段業務にあたっていると、行政書士と司法書士の違いを知らない方が多いことに気が付きます。
学習中の方では考えられないでしょうが、一般の方はどちらどんな仕事をして、何がどう違うのか?分からない方の方が多いかもしれません。
また、業務上、両方の資格を有していると優位になることも多いため、ダブルライセンスを狙う方も少なくありません。
そこで、今回はこれから資格を取ろうとお考えの方のため、行政書士と司法書士の合格率や試験内容、学習時間からみた難易度違いについてご紹介致します。
司法書士試験合格率推移から見る行政書士の難易度との違い

行政書士と司法書士の難易度は、司法書士の方が高いです。
先ずは、以下の「直近10年の司法書士試験の合格率推移表」をご覧ください。行政書士試験の難易度と司法書士試験の難易度を比較するために法務省公表資料から作成したものです。
【最近10年間における司法書士試験結果の推移】 (単位:人) | |||||
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格率※ |
令和2年度 | 14,431 | 11,494 | 595 | 5.17% | 10.7% |
令和元年度 | 16,811 | 13,683 | 601 | 4.39% | 11.5% |
平成30年度 | 17,668 | 14,387 | 621 | 4.31% | 12.7% |
平成29年度 | 18,831 | 15,440 | 629 | 4.07% | 15.7% |
平成28年度 | 20,360 | 16,725 | 660 | 3.24% | 10.0% |
平成27年度 | 21,754 | 17,920 | 707 | 3.25% | 13.1% |
平成26年度 | 24,538 | 20,130 | 759 | 3.09% | 8.3% |
平成25年度 | 27,400 | 22,494 | 796 | 2.91% | 10.1% |
平成24年度 | 29,379 | 24,048 | 838 | 2.85% | 9.2% |
平成23年度 | 31,228 | 25,696 | 879 | 2.81% | 8.1% |
※は行政書士の合格率です。
上記表の通り、司法書士の平均合格率3.6%強は、行政書士の平均合格率10.9%強と比較すると、かなり低いです。
合格率と難易度はリンクしていないこともありますが、この2つの試験に関しては、ほぼ合格率=難易度といっても差支えないでしょう。
行政書士試験の範囲と司法書士試験の範囲の違い

次に試験範囲が一目で分かるように、行政書士と司法書士の科目及び試験時間の表も作成しました。
【司法書士と行政書士の試験科目及び試験時間比較】 | ||
試験時間 | 司法書士の試験科目 | 行政書士の試験科目 |
午前(9:30~11:30) | ・憲法 ・民法 ・刑法 ・商法(会社法その他の商法分野の法令を含む) |
|
午後(13:00~16:00) | ・民事訴訟法 ・民事保全法 ・民事執行法 ・司法書士法 ・供託法 ・不動産登記法 ・商業登記法 |
・基礎法学 ・憲法 ・行政法 ・民法 ・商法 ・一般知識 |
行政書士の試験科目が6科目であるのに対して、司法書士は11科目です。
行政書士の一般知識をさらに3科目に分けたとしても司法書士の科目の方が多いですし、試験時間もずっと司法書士の方が長いです。
試験範囲と試験時間だけから司法書士の方が難しいとはいえませんが、出題範囲が広いことは分かります。出題範囲が広いということは、学習に時間がかかるであろうことは容易に想像がつきます。

行政士試験の3時間も長いと感じましたが、司法書士は一日がかりなので、その比ではないですね!

普段の学習量もさることながら、試験も最後は体力勝負になりそうです。
司法書士も行政書士同様足切り制度がある

司法書士試験も足切り制度があるのですね?!

そうなんです。そう意味ではどちらも一筋縄ではいきません。
行政書士の足切り制度については、ほとんどの受験生の方はご存じでしょう。
同様に司法書士も足切り制度が採用されています。
司法書士試験で設けられている合格基準は以下の通りです。
【令和3年度の司法書士試験の合格基準点】 | |
合格基準点 | |
筆記試験全体 | 満点280点中208.5点以上 |
午前の部(多肢選択) | 満点105点中81点(35問中27問)以上 |
午後の部(多肢選択) (記述式) |
満点105点中66点(35問中22問)以上 |
満点70点中34点以上 |
【行政書士試験の合格基準点】 | |
科 目 | 合格基準点 |
試験全体 | 満点300点中180点(60%)以上 |
法令科目 | 満点244点中122点(全体の50%)以上 |
一般知識 | 満点56点中24点(全体の40%)以上 |
司法書士試験の合格基準では行政書士のものとは異なり、毎年変わる相対評価が採用されています。
試験が終了した後に自己採点しても、合格通知が届くまでは合否がはっきりしない点は、司法書士の方がストレスが大きいといえそうです。
また、司法書士の方は、筆記試験の合格者には口述試験を受ける必要があります。
ただ、口述試験は受験しさえすれば、不合格となることはほぼないことから、非常識な服装で試験に臨んだり、一言もじゃべれない場合を除けば、足切りの心配はなさそうです。
行政書士と司法書士の学習時間から見る難易度
たびたび質問に上がる行政書士と司法書士の学習時間の違いについてですが、先ず行政書士の方は初学者で800時間以上が必要と言われています。
一方、司法書士の場合は3,000時間以上必要とされています。この3,000時間とは独学以外で学習した場合の標準学習時間ですので、独学の場合は、1.5倍の4,500時間以上を要すると言われています。
司法書士の学習時間は、行政書士の4倍近い学習時間が必要であることからも圧倒的に司法書士の方が難易度が高いのが分かります。
また、学習方法では行政書士は独学でも十分合格を狙えますが、司法書士の方は独学では限界があると感じます。
さらに、司法書士の場合は講座を利用したとしても、その学習量の多さ、難易度から一般的には数年かけて合格を目指す方が多いようです。
行政書士と司法書士のダンブルライセンスを狙うならどちらを優先?
行政書士と司法書士のダブルライセンスを狙う場合、一般的に行政書士から取得した方がよいと言われています。
特に初学者においては、難易度が低い行政書士から先に取得した方がよいとされています。
行政書士と司法書士では試験科目がかぶるものもあり、行政書士ではない科目を司法書士の試験で追加学習をするスタイルを多くの講座などでは推奨しています。
行政書士と司法書士の試験で同じ科目は、
・憲法
・民法
・商法
行政書士試験後司法書士試験を受ける場合の追加学習が必要な科目
・刑法
・民事訴訟法
・民事保全法
・民事執行法
・司法書士法
・供託法
・不動産登記法
・商業登記法
下からステップアップしていく学習方法は王道ではありますが、先に司法書士を取得すると、後が楽かな?と考えられなくもありません。
司法書士試験後行政書士試験を受ける場合の追加学習が必要な科目
・基礎法学
・行政法
・一般知識
仮に司法書士試験に数年を要するとするならば、司法書士試験に不合格であっても行政書試験に受かる可能性が残るため、司法書士試験を先にするスタイルでも良いのではないでしょうか。
まとめ
比較されることの多い行政書士と司法書士ですが、その難易度は異なり、はるかに司法書士の方が高いです。
ここ10年の行政書士の平均合格率は、10%前後ですが、司法書士は3%台であることからも難易度の違いが分かります。
また、試験範囲も司法書士の方が広範囲で、学習に要する時間も圧倒的に司法書士の方が多いのが実情です。
業務をする上で、ダブルライセンスを狙う方も少なくない資格ですが、両方とも取得するにはかなりの時間がかかることが予想されます。
一般的には、行政書士から取得する方法が推奨されています。
【ダブルライセンスが狙えるおすすめ通信講座】
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