国家資格である行政書士やFP1級の資格取得を検討している方の中には、恐らくダブルライセンスで取得をしたいと考える方も少なくないでしょう。
でも果たして、行政書士とFP1級のダブルライセンスを取得するメリットはあるのでしょうか?
そこで、今回は実際に行政書士とFP1級の資格を有して、業務を行っている私がダブルライセンスの必要性についてご紹介します。
行政書士とFPのダブルライセンスの保有者は意外に多い

行政書士として開業してから分かったのですが、行政書士の中にはFPの資格も保有している人が結構多いということです。
流石にFP1級までを保有している人は周囲にはいませんが、先輩行政書士の中にもFP2級までの取得している人はかなりいらっしゃいます。
私の場合は、計画して両方を取得したわけではありませんでしたが、今となっては取得しておいて良かったと思っています。
というのも、行政書士業務のうち相続に関する業務では、FP1級の学習が役に立ち、その相続業務は私の取扱業務の一つだからです。
行政書士試験では相続税に関数する問題は出題されません。
一方、FP1級の試験で出題範囲となっています。
実際の相続相談のシーンでは相続税について、質問されることがとても多いです。
もちろん、相続税について個別具体的な計算やアドバイスなどは行政書士もFPも行えません。(税理士業務の範囲です。)
しかし、例えば相続税の計算に際の基礎控除などのような一般的な知識は、相談者にお伝えする必要があり、行政書士としては「知りません」では済まされないのです。
そういう意味で、FP1級の資格を持っていて良かったと実感しています。
また、相続に関連する業務のうち、事業承継に関するものもFP資格が役に立ちます。
反面、行政書士が相続関連業務以外の業務を行う場合は、あまりFPの資格が有利に働くシーンはないと考えています。
行政書士とFPどちらを優先して取得すべきか

行政書士とFPとのダブルライセンスを目指す場合、どちらを先に受験すべきかについて悩まれる方も多いでしょう。
資格試験では、難易度の低い方から先に受験するのが一般的ですが、この2つの試験においては、試験の内容が異なるため、どちらを先に取得してもよいと考えています。
例えば、ダブルライセンスの取得を決めた時点で、試験までの期間を考慮するとどちらの試験に有利か?で選択しても良いでしょうし、得意な方から取得するのでも良いでしょう。
要はどちらの資格でも効率よく、最短で合格することがベストなので、あまりややこしい計画を立てない方がよいからです。
無理をして、何度も受験すことになってしまっては、最終的な目的であるダブルライセンスを手にするのに長期間を要することになってしまいます。
それでも取得できればよいのですが、途中挫折してしまうことも懸念されます。
何しろ2つの資格を目指すのですから。
私のように経理系に強く計算が得意であれば、FP資格から挑戦しても良いでしょう。
先ずは合格出来そうな資格を優先することをおすすめします。
合格体験というのは、皆さんが考えるよりずっと重要です。
逆に、一度不合格になると気持ちも萎え、モチベーションの維持も困難になります。
気持ちをコントロールする時間やエネルギーは、むしろ受験勉強に費やすべきです。
『勝算のない戦いには挑まない!』つもりで、じっくり計画を練ってから受験するようにしましょう。
行政書士とFPどちらの資格がおすすめ?
行政書士とFPとのダブルライセンスではなく、どちらか一方のみを取得したいと考えている方もいるかと思います。
どちらを取得すべきかを論じるときに、よく難易度や年収を基準にして選択をすすめる人がいますが、情報が正確とは思えない内容もあり、それをもって決めるのは危険かな?と感じます。
先ず、難易度については行政書士の方がFPよりやや難しいとする人がいますが、そういう人は果して、両方の資格を有しているのだろうか、と疑問に思うことがあります。
両方の試験を経験した私からすると、『やや』どころではありません。
行政書士試験は、FP試験の倍以上い難しいです。
年収については、仕事の形態があまりにも違うため、比較が難しいです。
では、どちらを取得すべきか?については、何を基準に決めたらよいでしょうか?
それは、取得後どんなスタイルで仕事がしたいのか、で決めるべきだと思います。
独立して事業主となって仕事をしたいのか、或いは就職して会社員として仕事をしたいのか、でどちらを取得するかを決めるべきです。
行政書士で仕事をする人のほとんどは、独立して仕事をしています。
行政書士の求人はあまりないのも理由の一つではありますが、そもそも業務の性質上就職には不向きな資格といえます。
逆に、FP業務で独立する人は少ないのが現状です。
FPについては独占業務がなく、言ってしまえば、資格がなくても出来る仕事がほとんどだからです。
ですから、独立して事業者として仕事がしたいなら行政書士、会社員として仕事がしたいならFPを目指すべきでしょう。
どちらも国家資格で、永久ライセンスなので、一度取得してしまえば更新の必要がありません。
ただし、行政書士のほうは行政書士会に登録しないと行政書士業務は行えません。
一方、FPは業務を行うに際して特別な要件は設けられていません。
参考までに、行政書士とFP1級の試験概要についてご紹介します。
行政書士 | FP1級 | |
受験資格 | なし | 次のいずれか ・2級技能検定合格者 + FP業務の実務経験1年以上 ・FP業務の事務経験5年以上 ・厚生労働省認定金融渉外技能審査2級合格者 + FP業務の実務経験1年以上 |
試験 | 毎年1回(11月) |
◆金財 |
試験時間 | 13:00~16:00 | 学科:基礎編10:00~12:30 応用編13:30~16:00 実技:金財 12分×2、FP協会 13:30~15:30 |
試験形式 | 筆記 | 学科:筆記 実技:金財 口述 日本FP協会筆記 |
受験料 | 7,000円 |
◆金財 |
合格基準 | 全体の6割以上(足切りあり) | 全体の6割以上(足切りなし) |
試験については、行政書士は受験資格が不要で誰でも受験可能ですが、FPについては3級から1級までがあり、2級と1級では受験資格が必要になります。
難易度は行政書士の方が高いですが、FPには受験資格が必要なので、受験資格がない方の場合は、3級からの受験となります。
そして、1級までを取得しようとすると、行政書士に合格するより時間を要することになることも予想されます。
とするなら、行政書士を先に目指すのもあり、かと思います。
まとめ
行政書士の中にはFP資格を保有している人は結構多いです。
行政書士業務のうち相続に関する業務についてはFP資格が役に立ちます。
反面、それ以外の業務ではFP資格が有利に働くシーンはほとんどありません。
行政書士とFPのダブルライセンスとした方が良いかにつていは、個人的にはあった方が良いと考えていますが、今後の仕事のスタイルによっては必要ない人もいます。
ダブルライセンスを狙う場合は、合格しやす方から取得するようにしましょう。
どちらか一方のみを取得したい場合は、事業者として仕事をするのか会社員で働くのか、でどちらの資格か決めるとよいでしょう。