宅建試験では計算問題を苦手とする受験生も多いと思います。
中には計算問題を捨て問とする方もいるようですが、捨て問を作るのはとても危険です。
そこで、今回は宅建の計算問題の難易度や対策について解説します。
宅建の計算問題は受験者自身が難しくしている!

計算問題を苦手とする受験生の多くは、実は自分自身で問題をややこしくしている傾向があります。
計算アレルギーとでも言うか、学生の頃から数学が苦手または計算が苦手という方は、計算問題というだけで、問題を解く前から難しい、解けないという意識で問題に向かっています。

僕の友人には、数字を見ただけで拒絶反応を起こす者もいます。

先ずは、そういった意識を捨てることから始めないといだめですね^^;
解けないと決めてかかっては、簡単に解ける問題でさえも解けなくなってしまいます。
先ずは、こういった固定観念を捨てましょう。
宅建試験の計算問題は数学の試験ではありません。難しい計算問題を解答させる試験ではないのです。
宅建試験の計算問題は決して難しくない
実は宅建の本試験では複雑な計算問題は出題されず、見方によってはむしろシンプルな問題ばかりです。
その理由は、試験で電卓の使用が認められていないからです。
電卓が認められていないということは、それほど複雑な計算をする必要がないということです。
複雑な計算をする問題ではないけれど、基本的な計算方法を覚えていないと当然問題は解けないのも事実です。
どんなに簡単な計算でも、例えば九九を覚えいないと掛け算や割り算が解けないように、基礎的な知識は必要です。
宅建の計算問題は、どちらかというと法律や定めを正しく理解していれば解けてしまう問題がほとんどといえます。
実務でも重要な報酬額の計算問題をマスターしよう!

宅建の計算試験のうち、報酬額に関する計算問題は頻出です。
試験だけでなく、実務においても必要となる知識ですので、是非マスターして下さい。
売買の媒介の場合の報酬額の計算
前述の通り、宅建試験では複雑な計算問題は出題されませんが、基礎的なことを知っていないと問題は解けません。
数学でいうところの公式を暗記していないと、応用問題が解けないことと同じです。
宅建業者の報酬額を問う問題は、もっぱら限度額に関するものが多いです。
受験生の皆さんは既にご存じでしょうが、宅建業者が受け取れる報酬の限度額については、取引金額によって計算式が定められています。
売買代金(税抜き) | 報酬限度額 |
400万円超 | 取引価格 × 3% + 6万円 |
200万超400万円以下 | 取引価格 × 4% + 2万円 |
200万円以下 | 取引価格 × 5% |
報酬額の計算では、取引金額は税抜き価格を使用します。
課税事業者であれば、ここで算出された金額に消費税10%を上乗せした金額までの報酬額を受け取ることが出来ます。
消費税の計算でひっかけ問題として出題されるのが、免税事業者の場合です。
免税事業者の場合は、消費税10%ではなくみなし仕入率4%を乗じて算出することに注意が必要です。
また、忘れてしまいがちなのが、建物は課税、土地は非課税ということです。
実際に問題を解いてみましょう。
宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)が売主B(消費税課税事業者)からB所有の土地付建物の媒介の依頼を受け、買主Cとの間で売買契約を成立させた場合、AがBから受領できる報酬の上限額は、次のうちどれか。なお、土地付建物の代金は6,400万円(うち、土地代金は4,200万円)で、消費税及び地方消費税を含むものとする。
1.1,980,000円
2.2,046,000円
3.2,112,000円
4.2,145,000円
平成21年試験 問41(改題)
この問題の土地付建物の取引価格は消費税込みで6,400万円、うち土地部分の価格は4,200万円(非課税)です。
報酬の計算をするときは税抜き価格で算出する必要があるため、先ずは建物の税抜き価格を計算します。
(6,400ー4,200)万円 ÷ 1.1 = 2,000万円となります。
次に報酬の限度額の計算をします。
売買価格は400万円以上なので、(2,000+4,200)万円 × 3% + 6万円 = 186万円です。
宅建業者Aは課税事業者ですので、192万円 × 1.1 = 211.2万円となり、答えの選択肢は「3」です。

平成21年だと消費税はまだ8%ですよね?

現在の10%で改題して計算しています。8%より計算が楽なので、以前より正解しやすいはずです。
ここでは出てきませんが、2018年に条件付きで報酬額が上がりました。
2018年1月1日より400万円以下の空き家に関する調査費を不動産仲介手数料に加算して受領出来るようになりました。
低廉な空き家など通常と比べて現地調査などの費用が発生する場合、空き家の売り主または交換をする者から受け取れる仲介手数料は、上記の限度額に現地調査などの費用を加えたものになります。
この現地調査費にも上限が設けられていて、その額は18万円、さらに双方の合意が必要です。
そのほか、媒介の場合と代理場合の限度額も異なりますので、注意が必要です。
賃貸の媒介の場合の報酬額の計算
次に賃貸の場合の報酬額の制限についてご紹介します。
賃貸の場合には、宅建業者が受取れる手数料は、貸主・借主を合わても賃料の1か月分までです。
賃料1か月分以内であれば、報酬のもらい方は自由です。
ただし、居住用建物の媒介だけは、依頼を受ける際にその依頼者の承諾が得られなければ貸主・借主からそれぞれ1/2ずつ仲介手数料を受領することになっています。
例えば、賃料10万円のマンションの賃貸の場合、宅建業者が受け取ることが出来る仲介手数料は、借主・貸主とも5.5万円までですが、依頼者の承諾があれば、貸主から11万円を受領することが出来ます。
そして、その場合は借主からは報酬を受け取ることは出来ないことになります。
このように、報酬に関する定めを理解していれば、計算自体は難しいことはありません。
出題傾向もいくつかパターンがありますので、過去問で慣れるのが重要となってきます。
権利関係「家族法」に関する計算問題
厳密には計算問題とは言えないかもしれませんが、民法の分野で家族法についても苦手とする受験生が多いと思いますので、解説していきます。
先ずは、以下の過去問をご覧ください。
Aには死亡した夫Bとの間に子Cがおり、Dには離婚した前妻Eとの間に子F及び子Gがいる。Fの親権はEが有し、Gの親権はDが有している。AとDが婚姻した後にDが令和4年7月1日に死亡した場合における法定相続分として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1.Aが1/2、Fが1/4、Gが1/4
2.Aが1/2、Cが1/6、Fが1/6、Gが1/6
3.Aが1/2、Gが1/2
4.Aが1/2、Cが1/4、Gが1/4
令和3年10月試験 問9
法定相続分の問題としては難しい問題ではありませんが、こういった問題は家族関係を図に書いて整理することが重要です。

図なしでは、正直私でも解答できるか分かりません^^;
。
問題文から以下のような関係図が書ければ、もう解答で出来たのも同じです。

上記の図より、本問の被相続人であるⅮさんの相続人は、Aさん、Fさん及びGさんであることが分かります。
問題文の親権云々は相続には全く関係ありません。受験生を惑わそうとしているだけです。
法定相続分の算出についても至って単純です。
被相続人の配偶者Aさんの法定相続分・・・1/2
被相続人の子Fさんの法定相続分・・・1/2 × 1/2 = 1/4
被相続人の子Gさんの法定相続分・・・1/2 × 1/2 = 1/4
ここで、勘違いやすいのが連れ子のCさんです。CさんはDさんとは血縁関係にありませんので、法定相続人ではないことに注意しましょう。
ただし、AさんとDさんの再婚を機にCさんを養子縁組していれば、Cさんも相続人となりますが、本問ではその記載はありません。
従って、Cさんは法定相続人ではないとの判断から、正解は「選択肢1」と解答できます。
それでも、どうしても解答出来ないときの対処法
宅建試験の計算問題は、どれも知っていれば解ける問題がほとんどです。
報酬額にしても、家族関係図にしても時間内に解くには慣れが必要です。
過去問を何回も解いて慣れて下さい。

それでも、解けない問題が出てきたらどうしたらよいでしょうか?

そういう時は潔く次の問題に進んでしまう方が良いです。
本試験で解けない計算問題が出題されたら、いつまでも時間をかけず、後回しするのも一つの方法です。
時間が足らなくなり、通常であれば解ける問題も解答出来ないとこととなってしまわないようにすることの方が大事だからです。
正解出来るか出来ないかが不確かな問題に時間をかけるより、確実に正解出来る問題を解くに越したことはありません。
まとめ
宅建の計算問題を苦手とする受験生は多いですが、実は宅建試験の計算問題はそれほど複雑ではありません。
計算嫌いなため自分自身で複雑にしているケースも見受けられ、そういった方には固定観念を捨てて学習することをおすすめしています。
宅建の計算問題は、それぞれの法律や定めを理解していれば、大抵は解けてしまう問題がほとんどです。
そのことを念頭に置いて、計算問題を克服するには、何度も問題を解いて慣れるのが一番の方法です。