宅地建物取引業者に勤務する人のうち、宅建士の資格の保有してない人もいるかと思います。
それらの人の中には、今後を踏まえて宅建士資格の取得をしたいと考える人も少なくないでしょう。
そこで、今回は宅地建物取引業者に勤務する人が宅建試験科目の一部免除を受けられる制度についてご紹介致します。
宅建試験の5問免制度は本当に有利なの?


宅建士試験の免除制度って、ぶっちゃけ有利なのでしょうか?

免除者と免除者以外の合格率を比較すると、有利という結果になります。
宅建試験の免除制度は、宅建業の実務に付いている人にとっては有利な制度といえます。
宅建試験の免除制度は現に宅建業者に勤務していることが要件とされていますが、経験年数などは問われていません。
現在宅建業者に勤務する人で、これから宅建士資格が取得を検討している人の中には試験を難しい感じる人もいらっしゃるでしょう。
こうした受験者にとって、有利となるかもしない5問免除の制度とはどんな制度なのでしょう。
宅建試験は受験資格がなく誰でも受験が可能で、出題数は50問、試験時間は2時間の試験です。
5問免除を受けることが出来れば、問題数は45問に減りますが、試験時間も10分短縮されます。
では、この5問免除は果して有利といえるのかについて検証してみたいと思います。
【宅地建物取引士過去10年間の合格率(5問免除者以外)】
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格基準 |
令和3年(12月) | 24,965人 | 3,892人 | 15.6% | 50問中34問以上 |
令和3年(10月) | 160,868人 | 27,152人 | 16.9% | 50問中34問以上 |
令和2年(12月) | 35,261人 | 4,610人 | 13.1% | 50問中36問以上 |
令和2年(10月) | 168,989人 | 29,728人 | 17.6% | 50問中38問以上 |
令和元年 | 169,126人 | 25,643人 | 15.2% | 50問中35問以上 |
平成30年 | 163,578人 | 22,996人 | 14.1% | 50問中37問以上 |
平成29年 | 161,867人 | 23,180人 | 14.3% | 50問中35問以上 |
平成28年 | 154,340人 | 21,768人 | 14.1% | 50問中35問以上 |
平成27年 | 153,210人 | 21,590人 | 14.1% | 50問中31問以上 |
平成26年 | 151,829人 | 23,660人 | 15.6% | 50問中32問以上 |
平成25年 | 149,070人 | 20,674人 | 13.9% | 50問中33問以上 |
平成24年 | 155,329人 | 23,900人 | 15.4% | 50問中33問以上 |
(一般財団法人不動産適正取引推進機構公表の資料より作成)
【宅地建物取引士過去10年間の5問免除者の合格率】
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格基準 |
令和3年(12月) | ー | ー | ー | ー |
令和3年(10月) | 48,881人 | 10,427人 | 21.3% | 45問中29問以上 |
令和2年(12月) | 635人 | 68人 | 10.7% | 45問中31問以上 |
令和2年(10月) | 45,492人 | 8,902人 | 19.6% | 45問中33問以上 |
令和元年 | 51,671人 | 11,838人 | 22.9% | 45問中30問以上 |
平成30年 | 50,415人 | 10,364人 | 20.6% | 45問中32問以上 |
平成29年 | 47,480 | 9,464 | 19.9% | 45問中30問以上 |
平成28年 | 44,123人 | 8,821人 | 20.0% | 45問中30問以上 |
平成27年 | 41,716人 | 8,438人 | 20.2% | 45問中26問以上 |
平成26年 | 40,200人 | 10,010人 | 24.9% | 45問中27問以上 |
平成25年 | 37,123人 | 7,796人 | 21.0% | 45問中28問以上 |
平成24年 | 35,840人 | 8,100人 | 22.6% | 45問中28問以上 |
(一般財団法人不動産適正取引推進機構公表の資料より作成)
ご覧の通り、過去10年間の試験結果では、5問免除者以外の一般の合格率は13%~17%で推移しているのに対し、免除者の合格率は19 %~25%となっていて、両者にはかなりの差があることが分かります。
それぞれの合格率が示す通り、5問免除を受けた方が有利であるといえそうです。
尚、全体の合格率については別記事でご紹介しています。
宅建試験の免除を受けるための「登録講習」の手順

宅建試験の免除を受けるには「登録講習」を受講する必要があります。
登録講習を受けることが出来るのは、冒頭で説明のとおり現に宅建業者に勤務している者に限られます。
講習は、宅地建物取引業法第16条第3項に基づき国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関で実施されます。
登録講習機関については国土交通省の『登録講習の登録講習機関一覧』で確認出来ます。
【登録講習の流れ】
1.登録講習の受講申込み
↓
2.教材などを発送
↓
3.2か月の通信講座
↓
4.2日間のスクーリング
↓
5.2日目の講義修了後に修了試験
↓
6.修了証の交付(修了試験から概ね1週間程度)
講習の申込みには、「従業者証明書」が必要になります。
また、受講料については実施機関によりますが、11,000円~19,000円が相場です。
本試験の申込みまでに修了証の交付を受ける必要があるため、5問免除で受験を検討する場合は余裕をもって、講習の申込みをするとよいでしょう。
本試験の申込みは例年7月中であるため、遅くとも6月までには修了証の交付を受けることをおすすめします。
試験免除される科目について

免除される科目って何でしょうか?

4つの試験科目のうち「税・その他」の「その他」の部分です。
免除される5問については、例年46~50問目に出題される問題です。
試験科目でいうと、4つの科目「権利関」、「宅建業法」、「法令上の制限」、「税・その他」のうち『その他』にあたる部分です。
具体的には、宅地建物取引業法施行規則8条に規定する「試験の内容」の1項と5項が免除科目となっています。
1.土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。(問49、問50)
5.宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。(問46、問47、問48)
登録講習以外も検討しよう!
宅建士試験の5問免除を受ける方が合格率が高く、試験に有利であることは前述した通りです。
しかし、免除者はそもそも宅建業に従事していることが要件となっていますので、仮に免除を受けなくても合格の可能性は、他の一般受験の人たちより高い可能性があるとも考えられます。
既に実務に関する知識を有していることは、初めて学習する人や宅建業に従事したことがない人たちからするとアドバンテージがあります。
とすると、時間やお金がかかる登録講習を敢えて受講する意味はないことになります。

宅建業者に勤務していること自体が有利だと思うのですが。

おっしゃると通り、既に不動産に関する知識をお持ちなのですから、そう言えると思います。
5問免除を受けうるにしても、試験の勉強をしなくてよくなるわけではありません。
また、上の合格率の表の合格基準の項目を見ると、一般試験も免除を受けた試験も満点の60%~70%です。
若干5問免除の方が低い傾向がありますが、びっくりするほどの差はありません。
どちらにしろ勉強する必要があるなら、いっそのこと効率よく試験対策が出来る講座を利用する方法ももありかと考えます。
宅建講座の中には、一般合格率の何倍もの合格率を誇る講座もありますので、気になる方はチェックしてみて下さい。
まとめ
宅建(宅地建物取引士)試験の免除制度は、宅地建物取引業者に勤務する人にとっては有利な制度といえます。
5問免除を受けた場合とそうでない場合の合格率は、5~7%以上の開きがあります。
5問免除を受けるには、国土交通大臣の登録を受けた機関で「登録講習」を受講して、修了証の交付を受ける必要があります。
本試験の申込みまでに修了証が必要であるため、遅くとも6月末までには交付を受けられるよう余裕をもって受講を心掛けましょう。
このほか、講座を利用して学習する方法でも高い確率で合格できる場合もありますので、登録講習を受けない方は講座を検討してみてはいかがでしょうか。