これから行政書士を目指そうとしている方の中には、行政書士がどんな仕事をしているのか?ご存じない方も少なくないと思います。
かく言う私も受験生の頃は、ぼや~んとは分かっていたつもりですが、仕事の内容について家族に尋ねられても上手く説明できなかったように記憶しています。
司法書士と間違われることが多い行政書士ですが、よく知らない一般の人からすると行政書士と司法書士の違いは分からないのも当然かもしれません。
そこで、今回は行政書士ってどんな仕事をいているのかご紹介したいと思います。
そもそも行政書士と司法書士ってどこが違うの?
行政書士も司法書士も法律系の国家資格であり、資格名に「書士」と付くため混同されやすい資格ではあります。
名称は似ていますが、それぞれ取り扱える業務は異なります。
行政書士と司法書士の取り扱える業務の違いとは

行政書士と司法書士は、業務として官公庁に提出する書類の作成とその代理が出来るという点で、多くの人にとって混同されやすいではないかと考えられます。
行政書士が作成できる書類の提出先は各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等です。
そのほとんどが許認可(許可認可)等に関するものですが、その数1万種類以上とも言われています。
一方、司法書士が作成できる書類の提出先は、裁判所、検察庁、(地方)法務局です。
不動産売買の際の必要とされる名義変更(所有権移転登記)などは、法務局へ申請する必要があります。
裁判所に提出する書類の作成の例では、「答弁書」があります。
これらの業務は行政書士は行えず、司法書士の業務とされています。
行政書士と司法書士で重なる業務もある

実は行政書士と司法書士では、どちらも行える業務というのがあります。
相続に関する業務などはその代表的な業務です。
ただし、相続に関しては司法書士の方が業務の幅が広いとえいます。
相続では行政書士では行えない業務があるからです。
不動産の名義変更の必要がある場合は、登記は司法書士の独占業務ですので、行政書士は行えません。
登記以外の相続業務は、司法書士でも行政書士でも行えますが、登記が必要なケースでは、はじめから司法書士に全ての業務を依頼する方が依頼者にとってはメリットが大きいといえます。
もっとも、登記以外の業務、例えば遺産分割協議書の作成や、戸籍の取得などの業務は扱わないという司法書士もいらっしゃるので、その場合は行政書士が書類を作成して、その後司法書士が登記のみを行うといったケースも珍しくありません。
このほか、外国人帰化申請は法務局に行いますので司法書士の業務ですが、実は帰化申請に関する手続きは行政書士でも行えます。
むしろ、一般的には行政書士の業務と思っている方が多いかもしれません。
とういうのも、出入国管理及び難民認定法に規定する申請、いわゆるビザ(一般的な俗称)関連の業務は行政書士が取り扱える業務の一つであり、ほとんどの方が管轄や申請先の違いが分からないため、外国人に関する業務は一括りに考えられているためです。
行政書士の業務は幅広く多岐に渡る

行政書士が取り扱える業務はとても幅広いですが、大別すると以下の4種類です。
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「官公署に提出する書類」とは
「官公署に提出する書類」とは、主に役所等へ提出する許可認可(許認可)申請に関する書類を指します。
行政書士の許認可業務では建設業許可が知られていますが、何しろその数は1万種類以上のあると言われていため、全ての業務をここで挙げることは出来ません。
身近なものとしては、例えば運送業を始めたいと場合は、運送業許可が必要になります。書類の提出先は地方運輸支局です。
また、飲食店を経営したいという場合もやはり許可が必要です。
通常の飲食店であれば、保健所の「飲食店の営業許可」だけで済みますが、風営法の対象となる場合は警察署の「風俗営業許可」も併せて必要になります。
このほか、営業する店の種類によっては消防署への届出等も必要になります。
ご存じない方も多いようですが、中古品を仕入れて販売する場合も警察署の「古物商許可」が必要で、これはネット等で販売する場合も同様です。

ということは、一般人が多く利用しているメルカリなんかも中古品を販売する場合は許可が必要ってことですか?

その通りです。ちなみに中古でも自分の物を販売するには許可は不要です。
権利義務に関する書類の作成
「権利義務に関する書類」と文字だけ見ると、どんな仕事なのかよく分からないと思います。
身近な例でいうと、上記でご紹介した相続に関する書類、遺言書や遺産分割協議書などがこれに該当します。
また、離婚協議書、各種契約書、内相証明なども「権利義務に関する書類」です。
意外なところでは、交通事故などで示談が成立している場合の示談書、或いは警察署や労働基準監督署になどに提出する告発状・告訴状なども行政書士が作成できる業務とされています。
告訴状や告発状というと弁護士業務と思われがちですが、実は行政書士も作成できる書類なのです。
事実証明に関する書類
「事実証明に関する書類」とは、言葉のとおり事実を証明するための文書で、分かりやすいものでは、会計帳簿や財務諸表、または現地調査に基づく図面などが該当します。
会計帳簿や財務諸表というと税理士業務のように感じ方も多いでしょうが、記帳代行や財務諸表の作成にとどまる限りにおいては、行政書士も行える業務なのです。
その他特定業務
その他の業務では、許与計算の代行や先に少し触れた、在留資格等に関する業務が該当します。
尚、給与計算等の業務を行うに際しては社会保険等の手続きについては社会保険労務士しか行えませんので、注意が必要です。
また、在留資格等に関する手続きでは、一定の研修を修了した申請取次行政書士でないと行えません。
この他、平成27年12月27日に施行された改正行政書士法により行政書士が行った許認可に対する不服申立て手続き等も行政書士が行ることになりました。
この手続きについては一般の行政書士では行えず、日本行政書士会連合会が実施する研修課程を修了した特定行政書士のみが行える業務とされています。
行政書士の仕事はAIに取って代わられる?

昔は代書屋といわれた書類作成の専門家行政書士の業務も、昨今のデジタル化の流れを受けて、手続きのオンライン化が進んでいます。
将来、AIにとって代わられる業務のトップに位置する行政書士業務ですが、その将来性はどうなのでしょうか?
私個人の意見としては、行政書士の仕事がなくなるとは全く考えてはいません。
というのも対面申請がオンライン申請へと方法が変わるだけで、手続きが必要であるという状況には変わりがないからです。
一方、従来の対面申請は今後益々減少し、いずれオンライン申請が主流になるのではないかとも考えています。
とはいえ、いきなり行政書士業務の全てをAIが行うのは不可能です。
オンライン申請だからAIという単純な話ではないと考えます。
例えば、許認可にしろ依頼者の個々の状況は様々であり、また必要とされる書類もそれぞれ異なります。
こういった書類の準備はAIでは不可能で、人の手と頭脳が必要です。
ですが、やはり人間の方も行政手続のデジタル化に向けた勉強は必須であることは間違いないでしょう。
まとめ
名称が似ていることから司法書士と混同されることが多い行政書士の業務はとても幅広く多岐に渡ります。
行政書士の独占業務とされる許認可に関するものだけでも、1万種類以上あるといわれています。
また、行政書士の業務は他の士業と重なる業務も多く、他の法律で制限される業務については行えません。
このようなことから、他士業と連携する必要性があるのも事実です。
また、昨今のデジレル化の流れを受けて、行政庁におけるオンライン申請への移行が益々加速するのは避けられない現状です。
私たち行政書士も遅れを取らずDXを学び、新しい時代に対応しなければなりません。
今後求められるのは、こうした時代の流れに対応できる行政書士ではないでしょうか。